「鬼はさまよう」
もし最愛の人が、何の落ち度もなく殺されたら、自分はいったいどうするのだろうか?
そして、本当に気が狂いそうな「復讐」に駆られたとしたら、たどり着く安らぎの場所はあるのでしょうか。
どこにでもいる普通の人間の哀しく、そして息苦しい本能を、飽きさせない展開で見事に描いた韓国映画「鬼はさまよう」。
主演は「殺人の追憶」「悪魔は誰だ」のキム・サンギョン。
イケメンなんですが、どこか抜けていて(笑)、安心感のある表情が非常にうまい役者さんです。
全編キム・サンギョンを通して描かれる、普通の人間の感情の葛藤に、観ている私たちもまるで自分の事のように引き込まれていきます。
キム・サンギョンは「悪魔は誰だ」でも、哀しい復讐に駆られた女性に対して、必死に「普通の生活」に戻るように説得します。
全編に仕掛けられた伏線をうまく回収し、健全に生きようとする人間の心の叫びを描いた脚本は観るものに訴えるものがありました。
他のレビューとかだと、意外と評判良くないですが(笑)気にせず私は高評価です。
毎日ニュースでも聞こえてくる、悍ましい猟奇的な事件の裏側で、最愛の人を失った、残された家族。
それぞれの人間の闇に潜む「鬼」は今日も、どこにたどり着くでもなく、さまよい続けるのかもしれません。
観ていない方は是非どうぞ。
評価:★★★★☆
2015年製作/103分/韓国
原題:The Deal
配給:「反逆の韓国ノワール2016」上映委員会
- 価格: 1045 円
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「名もなき復讐」
「哀しみ」が「哀しみ」を呼び起こし、残念ながらその「哀しみ」を救おうとする、必死の「愛情」も、また「哀しみ」に飲み込まれていく。
まさにどこを切り取っても、救いようのない「哀しみ」に包まれた韓国映画、「名もなき復讐」。
射撃の代表候補選手だった女性が復讐の鬼と化す!映画『名もなき復讐』予告編
獣のエゴが生み出した不運に、大事な自分の人生を苛まれた主人公を演じるのは、シン・ヒョンビン。
難しい役柄を終始切なく演じる、その演技力は観ている側に、常に語り掛けてくるようで、彼女の瞳が忘れられません。
その彼女を必死の「愛情」で救おうとするのは、モデル・アクション女優でもある、ユン・ソイ。
共感してはいけない感情を押し殺して、それでもなお、共感してしまう様を演じる役柄は、彼女の気高さとマッチして見応えがありました。
目を背けたくなる描写と、剥き出しのエゴイズムで、正直気持ちのいい映画ではありませんが、
誰にでも起こりうる、哀しいほど身勝手な運命を、まっすぐ生きようとした女性の視点で描いた韓国映画です。
誰も、何も、救えない気持ちが、「哀しい」ほど心に染みる映画です。
単なる復讐劇では終わらない脚本にも注目ですよ。
原題: THE LOST CHOICES
評価 ★★★★☆
「ドアロック」
「ドアロック」
誰にでも起こりうる、閉鎖的な現代のマンション住居という、非常に身近なサスペンスとして、またこれぞ、韓国女優の演技の神髄!という視点からも楽しめる映画です。
映画の醍醐味として「非日常的な」要素をいかに「日常的な」要素として組み込めるか、は重要だと思うのですが、身近に起こりうる題材のため、脚本的には驚くような展開も少なかったのは少し残念でした(苦笑)でも、演出はさすが韓国映画!って感じで、観ているものを飽きさせません!!
ひとり暮らしをする、所謂ごく普通の女性が必死に恐怖から逃れようとする様を見事に最後まで演じきったのは、「女は冷たい嘘をつく」のコン・ヒョジン。
この人の演技だけで成り立っている感が否めません(苦笑)が、実際にもしこのような事件が起こったら、本当にこんな感じになるのかも、と思わせる演技力は流石です。
「うん?うちの玄関の施錠大丈夫かな?」と何度も確認したくなりました(笑)
意外とお気楽に、ホラー系・サスペンス系を観てみたいなーって時にお勧めの映画です。
2018年製作/103分/韓国
原題:Door Lock
評価 ★★★☆☆
「暗殺 Assassination」
この映画の主題は、恐らく「愛」ではないはずなのに、いつまでも変わらない、その女優の凛とした美しさが観る者に「愛」の存在を感じさせずにはいられない、裏切りや宿命の人間模様を描いた韓国映画「暗殺」。
イ・ジョンジェ×チョン・ジヒョン×ハ・ジョンウ!映画『暗殺』日本オリジナル予告編
忌まわしき日本の歴史、日本統治下の上海などを舞台に繰り広げられる、哀しさだけが際立つ映画の展開。
難しい歴史など分からなくても、国家間の戦争が、一般の人々の何でもない日常を、辛く悲しい色で染めていくのは、人が生きるために、他の誰かの生きるためを犠牲にしていく生き物だということを証明してしまっているのでしょうか。
自分の人生を自分で決めることが出来ない時代の中、限られた命の時間の中で、精一杯懸命に生きようとする、凛と強く、可憐で美しい女性を演じるのはチョン・ジヒョン。
説明不要かもしれませんが、あの「猟奇的な彼女」(2003年)で超破壊的な立ち振る舞いと、その裏に見せる儚い乙女を、見事に演じた女優さんです。
大げさに言わして頂くならば、私の人生はこの映画「猟奇的な彼女」チョン・ジヒョンに出会っていなければ、全く違う人生になっていたかもしれない、と言える最も好きな女優さんです。
私事ですがこの映画に出会って、韓国映画の世界にどっぷりハマって(笑)、何やら思いつくままブログを書き始めて、いつの間にか多くの人に読んで頂いて、まだ当時馴染みのなかったWEBの世界で、その後生きてこれようとは(苦笑)
映画が人生を変えた。私の場合はまさにそうです。
彼女はこの映画「暗殺」で「猟奇的な彼女」に続いて、自身2度目となる大鐘賞の女優主演賞を受賞しています。 そんな彼女も現在は2児のお母さん。時間が流れるはずですね(笑)
チョン・ジヒョンのこの映画の中でもっとも好きなシーンは、ほんの、ひと時の安らぎの時間に、彼女が見せる、はにかむ様な笑顔が、その後の展開を考えて見てしまうと、
たまらなく切なく、たまらなく愛おしいです。
他にも「イルマーレ」「ラスト・プレゼント」で男性から見ても、かっこいい男性を演じたイ・ジョンジェが、最後まで太々しい憎まれ役を演じます。 またこれが腹立たしいんですわ(笑)
さらに「テロ・ライブ」では緊迫する状況下、完全に一人芝居とも言える演技を見せるハ・ジョンウ。この映画でも粗削りで、武骨なカッコよさを充分に魅せてくれます。 男性キャストふたりは「神と共に」でも共演。
不条理な時代に翻弄されて、それでも最後まで自分の人生を、「凛として」生きようとした人々を、豪華キャストで丁寧に描いた映画「暗殺」。
生々しい描写もたくさんあり、気持ちのいい映画ではないですが、演者が演じる!とはこういう事かと改めて再確認させてくれるお勧めの1本です。
是非チェックしてみてくださいね。
2015年製作/139分/R15+/韓国 原題:暗殺 Assassination
評価 ★★★★☆